みんなで育て、みんなで育つ

浅川淳司先生による子育てミニ講座~「幼児期の遊びと発達」

  子育てミニ講座第8弾は、愛媛大学教育学部 浅川 淳司先生をお招きしました。今回のテーマは、「幼児期の遊びと発達」です。

 「お子さんは、附属幼稚園でほぼ半日をずっと遊んで過ごしています。ここでは、英語や読み書きの勉強をするのではなく、遊びをメインに保育を組み立てています。遊んでばかりで、勉強はしなくていいいの?と不安を感じたことはありませんか?」と保護者に寄り添ったメッセージとともに、「夢中で遊ぶこと」こそが、子どもの心身を育て、結果的に学ぶ力の土台を作っていることを様々な側面から教えていただきました。

  まず、遊びの重要性を脳の側面から。夢中で遊ぶと、嫌々やる勉強より、脳は効率よく育つことが知られています。「楽しい」「できた」と感じるとき、脳内ではドーパミンがあふれ出します。これが神経回路を強くつなぎ、記憶や学習の定着を助けます。また、遊びで「楽しい」「できた」と感じ、没頭していく中で、得られるホルモン物質が脳のストレス物質「コルチゾール」を減らすクッションの役割をします。これによって、不安や緊張がほぐれたり、感情をコントロールする力が付いたり、レジリエンスが育ったりします。時間を忘れて遊んでいるとき、子どもの集中力は最高潮に達しています。しかし、ただ単純に「遊んでいる」ように見える状態では十分ではありません。より大切なことは、子どもが遊びに没頭しているということです。遊びへの没頭のことを心理学では「フロー状態」と言います。では、フロー状態を作り出す活動を普段の生活の中で、どのように見出していくか。ご褒美で釣るのではなく、内側から湧き出る意欲が大切です。「自分で選ぶ」「がんばったらできそうかも!」「そばに信頼できる他者がいる」この3つが満たされると、子どもは自ら学び始めます。

 発達的に見て、どういった遊びが夢中になる遊びなのでしょうか。子どもの「楽しい」のカタチは年齢で変わります。0~1歳は感覚遊び~触る、聴く、なめる等五感をフルに使って世界を確かめます。2~3歳はごっこ遊び~見立て、なりきり、「つもり」の世界で、想像力がどんどん広がっていきます。友達とつながることで更にイメージが広がって、別の空想の世界を作り出していく時期です。4~5歳はルール遊び~鬼ごっこ、ゲーム等みんなでルールを考えたりそれを確認したりする活動ができるようになります。遊びがより複雑になり、自分たちで遊びを柔軟に運用できるようになってきます。こういった遊びを通じて、きまりを守ること、協力すること、くやしい思いや達成感を分かち合うことなどの経験をしていきます。

 このような遊びの過程における大人の役割は、見守ること。誰かに見てもらっている、見守られている、一緒にやろうと誘ってもらえるといった関係性がないと、子どもの意欲は高まっていきません。子どもが冒険できるのは、困ったときに戻れる場所があるからです。その安心感が次の「やってみよう」へのエネルギーになります。

 遊びは、「自分で選ぶ」ことが大切ですので、大人が「~をしなさい」と直接的に伝えるよりも「見守る」ことの方が大事ですが、環境の準備という点では、大人にできることがいろいろあります。間接的に遊びを支援するための観点として、次の3点があります。一つ目は、子どもがこんな活動をしたいと思ったときに自分で選ぶことができるように手に届く場所においておくこと。二つ目は、積み木、空き箱など決まった遊び方のない素材で創造力を刺激すること。三つ目は、「これ、何に使えるかな」とさりげなく提案すること。これらが、興味の種をまく「環境づくり」につながります。特に大事なのが、二つ目です。今は、子どもの玩具がたくさん売られていますが、既成のものとして条件が設定されているものが多くあります。それは、子どもが設定された遊びを再現しているだけであって、創造力を伸ばすことにはなっていません。そうではなく、いろいろな使い方ができる素材から、子どもが自由に組み合わせながら遊びを生み出していく環境を整えておくことが、子どもの興味関心を刺激することになります。

 親子間でのコミュニケーションの基本的な姿勢として、子どもの出すサインを見逃さないことが重要です。子どもが出すサインをキャッチして、反応したり、環境を提供したり、そして、また子どもが出すサインを受け止めたりとサイクルを回していくことで、子どもが徐々に遊びに没頭していきます。

 AIが発展する時代を生きていくこれからの子ども。AIを使いこなさないと、生きていくこと、生活していくこと、仕事を得ることが難しくなってくるでしょう。そのような中で求められる創造力、問題解決力、コミュニケーション力などの力を育む要素が遊びにはたくさん詰まっています。遊びを通じて育まれるこのような力は、特定の習い事で育むよりは、「遊び」といういろいろなものを含み込んだなかで培われます。遊びは、「一生モノの力」になります。

   参加者の感想の一部を紹介します。「講演を通して、『幼児期において夢中で遊ぶことが、子どもの心と脳の発達を支え、その後の学びの土台となる』という視点が深く心に残りました。早期教育への価値観や、SNSを通じて流れ込んでくる多様な情報に触れる中で、わが子の育ちを他者と比較し、不安を募らせていた自分自身の姿にも改めて気づかされました。そうした中で、エビデンスに基づいた先生のお話は、感情ではなく理解として子育てを捉え直すきっかけとなりました。こうしたお話を通して、時間を忘れて没頭する「フロー状態」は子ども個人の集中力や能力の問題ではなく、安心や安全が保障された大人との関係性の中で結果として立ち現れるものなのではないかと考えるようになりました。関係性の安全が確保されてはじめて子どもは過度な緊張や不安から解放され、その過程の中で遊びが学びの土台として機能していくのだと感じました。わが子が同じ素材を用いて遊びを次々と変化させていく姿を、これまで集中力の欠如として捉えていた自分の視点も、今回の講座を通して大きく揺さぶられました。それはむしろ、創造性や内発的な動機づけが育まれている過程であると理解できたからです。外部の情報に触れる中で生じていた不安から一歩距離を置き、わが子の姿を信じて関わることが、結果として安心を育むのではないかと感じました。」

   浅川先生、今年も学び多き内容の講座をしていただき、ありがとうございました。

 

関連記事

公式インスタグラムを始めました。

インスタグラム